ガクチカ

2022年06月21日


「ガクチカ」という言葉をご存じでしょうか。

「ガクチカ」とは、「学生時代に力を入れたこと」の略で、就活の選考でよく質問されることです。最近、「ガクチカに悩む就活生たち」をめぐる報道が多くなっているそうで、「就活でガクチカを聞くのはもういい加減やめよう 「学生時代に力を入れたこと」に囚われる人々の呪縛」という「東洋経済オンライン」のネット記事を見つけました。Yahoo!Newsにも配信されていたので、ご覧になった方も多いと思います。

この記事は、「ガクチカの父」といわれる千葉商科大学准教授の常見洋平さんによるものです。

この記事を読んでいて、複雑な気持ちになりました。

ひとつは、いまの仕事でも、直接の担当者ではありませんが、学生さんと地域経済社会の団体さんとが協働して、地域課題に取り組む事業を実施しています。「ガクチカ」を量産することに加担しているのではないか、いや、加担しているな、と。

また、教育者としての前職を省みて、自分が開発してきた「実践型社会連携科目」の多くは、大学内においてすら量産される「ガクチカ」の一つになってはいなかったか、きちんと狙いどおりの教育/学習の場として機能したか、と。

さらに、常見さんがいうように、「アクティブ・ラーニングやPBL(Project Based Learning ※PはProblemとすることもある)を推奨している」なかで、「そもそも、お金も時間もない中、このような機会でも作らなければ、大学生活はますます単位取得と、アルバイトと就活で終わってしまう」というのであれば、ますます大学教育における経験学習の意義は高まるであろうし、そのための教授法や開発・評価法についての実践と研究が求められるに違いない、と。

そして、そもそも、常見さんがいうように、「「学生時代に力を入れたこと」としてのガクチカを期待するよりも、「学生生活に力を入れられる」ような環境をつくらねばならない。」し、「どうせ学生は、遊んでばかり」「学生時代はモラトリアム」「学生さんは時間的融通が利く」といった、「妄想ともいえる「若者らしさ」の押し付け」を大人たち、とくに、おじさんがやめるべきだということを強く感じました。

自分の学生時代を省みると、学生運動にけっこう忙しくしていたと思いますが、自分の小遣いのためにアルバイトをすることもできたし、奨学金ももらえて、学費と生活のことは心配していなかったので、けっこう恵まれていたと思います。

それに比べて、いまの学生さんは、彼ら自身がいうように「世知辛い」。そう思います。大学の授業出席は厳格化されるし、授業外学習時間を実質化するためとして、課題はたっぷり出るし、最低賃金の上昇によって、学生が従事するであろうアルバイトの大半が、いまや、最低賃金すれすれの状況です。塾講師や家庭教師ですら、そうです。事実、前職時代には、学生から「大学、課題、アルバイト、家事で、1日24時間では足りません。何とかなりませんか」と悲鳴にも似た相談を受けたことがあります。

いちおじさんの認識は、学生さんにガクチカは求めないけど、「学生生活に力を入れられる」環境をつくるためには、学生さんだけの問題ではなくて、この20-30年間、ほとんど賃金が上昇していないわが国のありようを変えないといけないんだろうなと。学生さんだけでなく、彼らを支える保護者の経済状態が悪化していることが、彼らの暮らしぶりに大きく影を落としているにちがいないのです。

そんなことも考えながら、来るべき参議院議員通常選挙の投票先のことを考えたりしています。明日は、公示日ですね。