「韓国におけるサービス・ラーニング研究の研究関心の変遷」

2022年07月18日


昨夏に亡くなった立命館大学名誉教授の林堅太郎先生の追悼論文が、北東アジア学会の機関誌『北東アジア地域研究』28号に掲載されました。

要旨

本稿では、韓国におけるサービス・ラーニング研究の研究関心の変遷について、教育政策の動向との関連で検討すべく、1990 年代以降の韓国の関連する教育政策を概括し、公刊されている韓国のサービス・ラーニング研究論文の要旨に自然言語分析を施し、その関心の潜在因子を探った。

1990 年代以降の韓国の関連する教育政策から、サービス・ラーニングには、人性教育と教科科目の学習とをつなぐ有効な教育方法論として期待が寄せられているとみることができる。

また、各教育課程の期間に公刊された論文の特徴は、2007 年教育課程以前の期間は、米国のサービス・ラーニング理論を韓国の文脈でどのように適用可能かが模索され、2009 教育課程の期間には、教員養成課程における教育奉仕科目の必修化の影響を受けながら、「韓国型サービス・ラーニング」とはどのようなものかが模索され始めた。また、2015 教育課程の期間には、「人性教育振興法」の施行もあり、人性教育や統合教育に対する関心が高まり、ついには、就学前教育におけるサービス・ラーニングの可能性を見出そうとしたものがみられた。

このようなサービス・ラーニング推進の動きに対して、行き過ぎた新自由主義を助長するとの批判もあるが、米国では政権交代を経ても推進されてきた経緯もあり、韓国でもその素地があるものと見込まれる。

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